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広島空港 ローカライザーの高さ検証

14日夜、広島空港に着陸しようとしたアシアナ航空機が滑走路外に逸脱し、機体が破損、多数の負傷者を出す事故が発生した。ローカライザーと呼ばれるILSの無線アンテナに衝突し、車輪の1つの制御を失ったことが事故を大きくしたとも言われている。

ローカライザーは滑走路端から325mの位置に高さ6.4mのものが設置されている。通常の飛行であれは高さ30mで通過するので支障なく、法令に準拠した施設と思われるが、高さ制限の厳しい空路上にしては違和感を覚える高さである。

東海ラジオHPのアナウンサーのコーナーで、酒井アナウンサーがこの点を指摘され、
「広島空港でアシアナ機がぶつかったローカライザー高さは6.5mと報道されていますが、アンテナが設置された地面が、実は滑走路面よりも3m以上低いために、金属のパイプなどで嵩上げされて6.5mになったのではないか?」
と滑走路面から3m程度の高さではないかと分析されている。

最近、提供開始された地理院地図(電子国土WEB)によって検証を試みる。レーザープロファイラ(LP)による約5m四方平均の標高データが取得でき、滑走路、グラウンド、農地など平坦な地形では十分な精度を持っている。
Photo

結果は以下の通りで、舗装区間とローカライザー付近の地盤高の差はわずか20cmで、アンテナ部の地盤は特段低くないことがわかった。この差は舗装の最上層の厚みと思われ、滑走路東側の芝地は水平(レベル)だった。ちなみに、オーバーラン部両端の約40cmの差は、滑走路の縦断勾配0.5%によるものだろう。

・滑走路東端部  T.P.+324.8m
・オーバーラン東端部  T.P.+324.4m
・ローカライザー西側  T.P.+324.2m

滑走路端からローカライザーまでの縦断形状の例として、広島空港と同じCAT-Ⅲb運用可能な施設が整備されている釧路空港を以下に示す。広島空港と酷似したレイアウトだ。ローカライザーが設置されている図面左側の芝地は、緩い勾配を持って切り下がっている。
この図は模式図なので実際の高さを地理院地図で確認したところ、ローカライザーの設置地盤はオーバーラン部の舗装面から2m低いことがわかった。
仮に、釧路空港のローカライザーの高さが酒井アナウンサーが各地の施設で推定されている3mとすると、舗装部端部からわずか1mしか突出していないことになる。アシアナ航空の事故機ギアの高度はローカライザーの破損状況から3m前後と推定されることから、釧路空港では滑走路手前への接地は起こっても、ローカライザーへ接触しなかった可能性が高い。

Photo_2

なぜ広島空港では、滑走路手前の芝地が水平切りになっているのだろうか。
下図によればこの付近は切土となっており、掘削量を最小限とする理由が考えられる。柔らかい沖積地でなく、花崗岩の山塊で掘削単価が高いため、コストを考慮した設計だろう。
空港の端部は、大部分の空港が平地・海上・丘陵地を問わず盛土のため釧路空港のように勾配を持っていると思われ、広島空港東側のように切土で水平というのは珍しいようだ。

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また、ローカライザーそのものの高さが6.4mというのも、他と比較して高いようだ。地形的な理由からか省電力型なのか理由は定かでないが、広島空港は上記で整理した通り設置地盤高が他空港に比較して高く、むしろ低く抑え込む必要があるのに、なぜ高いのか謎である。

原因が人的要因か気象条件かのいずれかにかかわらず、着陸寸前の対応困難なタイミングに航空機が急降下する状況は想定される。このような状況下でも、機体損傷や負傷者を出しつつも人命を守るというのが、空港施設の設計思想である。このためには設計基準を満たすだけでなく、各設備の安全度を揃える(危険なものを叩く)ことがフェールセーフ設計の一端をなすと思える。
広島空港の東端にあったローカライザーは3階建ての建物に匹敵し、他の施設と比較して突出して安全度が低い。アンテナなので少々引っ掛けた程度では致命的な問題とならないと考えていたのかもしれないが、今回の事故は設備の一部がギアに絡まり車輪をロックさせ、機体がコントロールを失い斜面から転落寸前の位置まで暴走するという、前例のほとんど無いパターンの事故連鎖が起こっている。
飛行機による旅客輸送が始まって100年弱にすぎず、想定外の事故要因はまだ潜んでいるかもしれない。思い込みによらず、真摯な態度での調査・報道そして個人意見の発信を望むところである。


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